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研究とビジネスの両立に潜む矛盾をどう解決するか。R4Dアドバイザリーボードメンバー・森正弥氏が語る

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September 04, 2020

森正弥氏の画像

2020年4月、メルカリR4Dの「研究開発アドバイザリーボード」に、元楽天技術研究所(通称:RIT)所長で、現デロイトトーマツコンサルティング合同会社執行役員の森正弥氏が就任されました。

就任リリース:「mercari R4D」研究開発アドバイザリーボードに森正弥氏(元楽天技術研究所代表)が就任

2006年に、楽天技術研究所を立ち上げ、その代表として10年以上も研究組織を率いてきた森さん。彼の視点から見た、今、そしてこれからのR4Dの研究開発について、お話を伺いました。


ー簡単に森さんのこれまでの経歴について教えていただけますでしょうか?

研究との関わりでいうと、最初はアクセンチュアで、シカゴ、パロアルト、ソフィアアンティポリス(フランス)といった拠点で、研究所のマネージャーとして多様な研究者と接していました。並行してグローバルの案件も見ており、日本の大企業のIT活用と、発展途上国も含む海外のIT活用の違いをまざまざと見せつけられました。当時、ケニアのプロジェクトとコミュニケーションをしていたのですが、彼らのIT活用は非常に先進的でした。

そうした事例を見ながら、もっとインターネットの力を使って日本の研究開発を推進すべきだと考えました。2006年にデータ活用をHCI(Human Computer Interaction)やロボティクスといった研究領域に展開していくビジョンを掲げて楽天技術研究所を立ち上げ、2019年まで代表を務めていました。

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ーR4Dは2017年12月、メルカリ創業4年目に設立されました。森さんから見た現在のR4Dとは、どのような研究開発部署でしょうか。

R4Dは、大学の先生といったアカデミアの方の巻き込みが上手だと評価しています。現在の研究領域を見ても、既存事業の発想からはなかなか出て来ない、新しい取り組みにリーチしていると感じています。同時に、今後の課題としては、なぜそのテーマに取り組むのか、またその答えをどのように見せていくのかという点はチャレンジだと考えます。

新しい取り組みに挑戦していくことは、研究所として、会社として視野を広げるという意味ではもちろん重要ですが、お客さま・社会にどうやって貢献していくのかということはさらに重要なポイントです。研究成果を、どのようにビジネスにインプリメントしていくか。まさにそこが課題だと。

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poimo(東大と共同研究を行なっているインフレータブルモビリティ)などはメルカリのビジネスとの接続点が見えづらいようにも思えますが、メルカリの二次流通のマーケットと、一次流通のマーケットの緩衝材となり、今後の社会の在り様に対してポテンシャルを示すことができるのでは、と考えています。二次流通だけではなく、一次流通に対しても、パースペクティブチェンジのきっかけとなると感じています。
また、poimoを目にした後は、自然と「poimoに合う街とは?」という風にアイディアを考えてしまいますよね、いい研究トピックだと思います。


ー企業研究所として、メルカリR4Dに期待することがあれば教えてください。

どの企業研究所も、アカデミックな成果とビジネスをどう接続するのか、またその接続を通じてお客さま、そして社会に対してどうやって価値を出していくかという挑戦をしています。そこはどの企業研究所も共通の課題です。

中でもメルカリの場合は、フリマアプリという新しい社会を体現するCtoCサービスを作り出し、そして実際に社会が変わりつつあります。メルカリのように、新しいマーケットを体現するサービスを生み出した会社は、新しい社会に向けたアカデミックな成果とさらなるビジネスをも作っていけると考えています。

そのためにも、よりフューチャー思考を持った存在を目指すこと。面白いけれど、同時にその道のりはとても大変で、今の社会がどこに向かっていくのか、そしてどのような道のりを経て向かっていくのかを常に見定めていく必要がある。R4Dは様々な社会通念を超えて、社会における新たなパースペクティブを生み出していく存在となることを期待します。「メルカリだからできる未来」を、R4Dとして提示できるといいなと感じています。

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ーR4Dがそうした未来を目指すにあたって、今後、森さんがアドバイザーとして大事にしたいことは何ですか?

これまで研究所のマネジメントとして、アカデミックとビジネスのつなぎ合わせをやってきました。研究は様々な知見を得て、学術的・本質的なことに取り組む。ビジネスは成果を出し、成長をする。この両者を実現することは少なからず矛盾をはらみますが、企業研究所として、矛盾を取り払えるような枠組みややり方を、試行錯誤し発見してきた自負があります。そうした点では貢献できるのかなと。

この矛盾と葛藤を抱えた問題は、計算量と人間力で取り組むべきテーマですし、アカデミック側もビジネス側も、垣根を超えて集まり、問題を解決していくことには大きな意味があると考えています。

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取材を終えて

今回のインタビューを通じてのキーワードとなった、「アカデミアとビジネスの接続」。 企業研究所として重要な命題である一方で、めまぐるしく変化するビジネス・社会環境の中で、研究成果の社会実装を行うことは容易ではありません。しかし、その先で実現される新しい社会を夢想し、Go Boldにイノベーションを実現していくために一つずつ障壁や垣根を超えていくことの重要性を改めて感じた取材でした。


森正弥氏 プロフィール

デロイト トーマツ コンサルティング合同会社 執行役員パートナー、東北大学 特任教授。アクセンチュア、楽天を経て現職。アクセンチュアでは、製造業・金融・官公庁の案件に従事し、先端技術リードとして研究所展開プロジェクトに従事。楽天では執行役員 兼 楽天技術研究所代表として世界5カ国7拠点での研究開発を統括。一般社団法人 日本ディープラーニング協会 顧問、企業情報化協会 AI&ロボティクス研究会委員長。過去に、情報処理学会アドバイザリーボード、経済産業省 CIO育成委員会委員、APEC(アジア太平洋経済協力)プロジェクトアドバイザー等を歴任。著作に「ウェブ大変化 パワーシフトの始まり」(近代セールス社)がある。慶應義塾大学 経済学部卒。


写真撮影:熊田 勇真
取材・執筆:伊賀あゆみ