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生成AIと20人の「自分ごと」から始まる、新しいデザインのかたち

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こんにちは。R4Dでサービスデザインの研究をしている草野です。

2026年1〜2月に山形大学社会共創デジタル学環共創プロトタイピングラボ(三冨研究室)との共同で山形市内で「自分ごとデザインプロジェクト」を実施しました。本プロジェクトでは、山形の若者を中心とした20名の参加者が、生成AIの力を借りながら、自分ごとで考え・自分で作り・実際に試すということに約3週間かけて取り組みました。この記事では、プロジェクトの考え方やプロセス、そして参加者の具体的な事例を紹介します。

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「自分ごとデザイン」とはなにか

自分ごとデザインは、生活者自身が自分ごとからデザインするという考え方です。

これまで、サービスや製品をデザインする際には、専門家が調査・設計・実装を主に担ってきました。しかし、生成AIをはじめとする技術の急速な進化により、課題や欲求を持つ生活者自身が、自分ごととして調べ、考え、試すことができるようになりつつあります。私たちは、この変化の先に新しいデザインのかたちがあるのではないかと考え、そのアプローチを「自分ごとデザイン」と呼んでいます。

自分ごとデザインで私たちが期待していることは、大きく3つあります。

1つ目は、今まで言語化・表現されてこなかった価値の発見です。専門家がインタビューで聞き出す情報と、生活者自身が能動的に考え行動する中で生まれる情報は、性質が異なります。自分ごととして取り組むことで、生活者の頭の中にある「なんとなくこう思っている」が、より具体的な形で見えてくるのではないかと考えています。

2つ目は、リソースの限界への対応です。地域にはさまざまな課題や需要がありますが、企業や行政だけでは対応しきれない部分があります。生活者自身が自分の手で解決できるところを考えて解決していけるようになると、全体としてより多くのことが前に進む可能性があります。

3つ目は、生活者自身のエンパワメントです。自分ごとで考え行動すること自体が、生活者自身の可能性を広げることにつながるのではないか。実際にプロジェクトの中で、参加者が活き活きと取り組む姿を目の当たりにして、この可能性を強く感じました。

今回のプロジェクトは、山形の若者を中心に実施しました。メルカリR4Dでは、私たちのミッションである「あらゆる価値を循環させ、あらゆる人の可能性を広げる」に向けて、さまざまな地域や文脈での実践を拡げたいと考えています。山形は、地域ならではの暮らしの知恵やつながりがある一方で、デジタル技術を活用した新しい取り組みの余地も大きい場所です。

参加者には、山形大学や東北芸術工科大学の学生、地域で働く社会人など、20名の方々に集まっていただきました。さまざまな参加者が、それぞれの「自分ごと」を起点にプロジェクトに取り組みました。


プロジェクトのプロセス

自分ごとデザインプロジェクトのプロセスは、人とAIとの対話、人と人との対話、実際に試してみることの3つを柱にしています。約3週間、全4回の集まりを通じて進めました。

人とAI(Personal Design Facilitator)との対話

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このプロジェクトの特徴的な仕掛けの一つが、R4Dの草野が研究しているPersonal Design Facilitator(パーソナルデザインファシリテーター)という専用の対話AIです。このAIは、参加者が自分ごとを言語化する支援をします。

具体的には、参加者がAIとチャット形式で会話すると、AIが次々と質問を投げかけてきます。「それはなぜですか?」「具体的にはどういう場面ですか?」と聞いてきます。そのプロセスを経ることで、自分でも気づいていなかったことが言葉になっていきます。

言語化された内容は起承転結のようにまとめて出力する機能もあり、それを使うことで、他の人に自分の考えを伝えやすくなったり、次のプロトタイピングの方向性を考える材料にもなります。

AIによるプロトタイピングの支援

自分ごとを言語化したあとは、小さく試してみる(プロトタイピング)ステップに進みます。ここでもAIが活躍します。

たとえば、PD Facilitatorを使って日常生活のなかで小さく新しい試みをしてみる体験型のプロトタイピングを一緒に計画しました。実際に小さく新しい試みをしてみることで、やってみたら思っていたのと違った、といった気付きが得られていました。他にも、他の商用の生成AIサービスを使ってウェブアプリのプロトタイプを作りました。参加者は「こういうアプリを作りたい」「こういう機能が欲しい」という内容をAIに伝えるだけで、実際に動くプロトタイプが生成されます。テキストで考えるだけでなく、見た目として動くものを目の前にすると「ここは違うな」「こういう機能も欲しいな」と、新しい気づきが次々に生まれます。

これにより、参加者は特別なプログラミングスキルがなくても、自分のアイデアを形にして試すことができました。

人と人との対話

AIとの対話だけでは引き出せないものがあります。それは、人同士の対話から生まれる共感や刺激です。

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プロジェクトでは、オンラインコラボレーションツール上に各参加者の考えたこと・試したことを並べ、定期的に対話する場を設けました。対話にはルールを設けています。話し手が2〜3分で自分ごとを共有し、聞き手が質問やコメントをする。4人組で順番に回していく。このとき大事にしたのは、評価ではなく共感と刺激です。「それいいね」「もっとこうしたらどう?」という対話が、一人では到達できなかった視点を生み出していきます。

プロジェクトが終わってから感想をお伺いしてみると、人同士の対話が面白かった、新しい気付きが得られたといった肯定的なコメントが得られました。

全4回・約3週間のスケジュール

プロジェクトは以下のスケジュールで進めました。

  • 第1回(1/29)オフライン対話会: AIと人の対話、人と人との対話の体験。自分ごとの言語化をスタート
  • 第2回(2/5)オンライン対話会: 考え・試したことを共有し、人同士で対話
  • 第3回(2/12)オンライン相談会: さらに考え・試したことを共有し、深める
  • 第4回(2/19)オフライン発表会: 各人が考え・試したことを発表し、コメントを残す

会と会の間には、参加者が持ち帰って実際に試す期間があります。AIとの対話やプロトタイプ作成は日常の中でも進められるため、会に参加する以外の時間でも、自分のペースで取り組むことができました。


対話と試行のなかで動き出した「自分ごと」の事例

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3週間という短い期間でしたが、参加者一人ひとりの「自分ごと」は、AIとの対話、人との対話、そして実際に試してみることを通じて、少しずつ明確になり、ときにはピボットし、具体的な行動として動き出していきました。ここでは、そのプロセスが特に印象的だった事例をいくつかご紹介します。

事例1: 「食の記録」から見えてきた、自分にとっての本当の課題

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この参加者の出発点は、小学校4年生の頃からの「食」への興味でした。料理の写真を撮るのは好きだけれど、記録を続けるモチベーションが続かない。スマホの中に写真が埋もれていってしまう——そんな漠然とした悩みを持っていました。

AIとの対話で自分ごとを掘り下げていくうちに、「なぜ続かないのか」の輪郭が見えてきます。問題は意志の弱さではなく、「完璧に記録しなければ」という自分自身の思い込みにあったのです。この気づきをもとに、生成AIサービスを使って食の記録アプリのプロトタイプを作り始めます。

作って試すプロセスの中で、さらに理解が深まりました。「完璧に記録しようとするのではなく、今日の一皿をランダムに選ぶような軽やかな習慣づけが継続には不可欠」——三日坊主になりがちな自分を知っているからこそ、完璧主義を手放した設計にたどり着いた。コード共有プラットフォームへのデプロイにも初めて挑戦するなど、プロジェクト前には想像していなかった行動の広がりが生まれました。

事例2: 漠然としたもどかしさが「やりたいこと」に変わるまで

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この参加者は、授業で制作したデザインが評価や成長には繋がる一方で、実際に使う人の生活に届かないという漠然としたもどかしさを感じていました。

AIとの対話でこのもどかしさを掘り下げていくと、「自分の作品が誰かの日常の中で本当に使われる」ことへの強い願望が言語化されていきます。そこから生まれたのが、大学内に依頼ボックスを設置し、学生同士が専門を活かしたものづくりを依頼・制作でき、学生の実績作りにも繋がるCAMPUS LINKという仕組みのアイデアになりました。

人同士の対話会でも、ぜひ実現してほしい!という声が聞こえてきて、参加者も自分で大学の先生と相談しながら何かしらカタチにしたい!と意気込みを語っていました。

事例3: 「やる気を出す」から「未完成でも大丈夫」へのピボット

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この参加者は、理想が高く完璧を求めすぎるあまり、アイデアが出てきても形にすることのないまま終わってしまうという課題を持っていました。

最初にこの参加者が取り組んだのは、準備段階で気持ちを高めてくれるアプリのプロトタイプでした。しかし実際に試してみると、画面上のボタンや文字ではやる気を駆動させるには弱い。それどころか、タスクを細かく分解すること自体が「新たな完璧」を求める原因になっていることに気づきます。「動けるようにしよう」というアプローチ自体が、自分にとっては逆効果だった——これは試してみなければ得られなかった発見でした。

転機になったのは、プロジェクト内の対人発表の場です。「未完成であることをネガティブに捉えずポジティブに変える」という、まったく異なる方向への転換を生みました。途中で止まっていたアイデアを匿名で共有し合い、次につなげるという新しいコンセプトは、最初のアイデアとは180度異なるものになりました。


おわりに

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約3週間という短い期間でしたが、20名の参加者が生成AIの力を借りながら、それぞれの自分ごとを言語化し、プロトタイプを作り、実際に試す——という一連のプロセスを経験しました。

私たちにとって大きな発見だったのは、AIが「自分ごと」の言語化や試作を支援することで、3週間という短期間でも具体的なプロトタイピングまで到達できるということです。専門的な技術を持たない参加者でも、AIとの対話を通じて自分のアイデアを形にし、実際に試し、そこから新たな学びを得ることができました。AIと人が、それぞれの強みを活かして組み合わさることで、一人ひとりの「自分ごと」が具体的な形になっていく。そのプロセスからは非常に示唆に富んだデータが得られました。データの中には、一人ひとりがどのようなことに悩んでいて、それがどのように言語化されていくのか、そしてどういうことをやってみたいという考えに至るのかを、詳しく知ることができました。これはデザインリサーチとしても示唆深いものといえます。

このプロジェクトの成果を今後どのように発展させていくか、引き続き取り組んでいきたいと考えています。自分ごとデザインというアプローチに興味を持っていただけた方は、ぜひお気軽にお声がけください。

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