無駄な婚活はもうしない!最新テクノロジーは恋愛に活かせるか?[後編]

無駄な婚活はもうしない!最新テクノロジーは恋愛に活かせるか?[後編]

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「無数の組み合わせを調べ、最適な組み合わせを提案する」のが得意と言われる量子アニリーング。男女のマッチングにも応用可能とのことですが、「人間の気分や感情の数値化が難しい」ため、「オススメのマッチング相手をある程度提案することはできるが、完璧には不可能」と言います。

では、コンピューターで数値化できない人間の気分や感情を、どのように扱うか、それも量子アニーリングにお任せできないのでしょうか。量子アニーリングに未来を予測してもらう事態は、将来起こり得るのでしょうか。前編に引き続き、東北大学大学院情報科学研究科准教授・大関真之先生にお話をうかがいました。

前編はこちら。

人間の気分や感情は、コンピューターにはわからない?

――人間の気分や感情の数値化は難しいんですか?

大関 やっぱり、定まったものではないですよね。強い怒りとか悲しみはわかりやすいかもしれませんが、微妙な感情がないまぜになっていることもある。たくさんの事例を集めれば、こういうシグナルが出ているときはどのような感情にあるか、それこそコンピューターを利用してその傾向を学習することはできるでしょう。その傾向を学べば、人間のように感情とそれに応じたリアクションをするシステムは作れます。

――そうなんですか?!

大関 ええ、いわゆる人工知能ですね。それがうまくいけば、コンピューターの中で人間の感情や気分を数値化できたと言えるかもしれません。

これを大まかな流れで説明すると、まずはコンピューターの中にそうした感情の傾向を真似できるプログラムを用意します。だけど最初は、感情とは無関係なデタラメなシグナルを出すでしょう。生まれたての赤ちゃんと同じです。そこからこれまでの事例を多く学んで、真似をするのがうまくなっていきます。

ただ真似をするにも限界があって、当然、現在のコンピューターで真似ができる範囲となります。しかも膨大な事例に合わせるために、できるだけ数多くの真似をしてもらう必要がある。そうなると、真似をするのにも時間がかかるし、学習をするのにも時間がかかります。

(人の感情を数値化するという直接の目的の事例はないものの)これまでの事例をコンピューターに真似させる、という技術で、量子アニーリングを利用しようという動きがあります。それを活用することで、今まであやふやだった部分をうまく埋め合わせることができるようです。ここら辺はまだ研究途上なので、わからないこともありますが、不確実な要素がある事例に対しても、うまく真似できることが確認されています。

大げさな言い方をしたら、僕らは量子力学を用いて表さないと、うまく表せない不確実さをもっているかもしれない(笑)

――「私たちはもしかしたら優秀な量子コンピューター」ってことでしょうか、すごくビックリです。

大関 もちろん優れたコンピューターを使えば、うまく(感情を)適切に真似できるものが構成できて、感情や気分を数値化できるかもしれません。ただ、(単に優れたコンピューターを求めるだけではなく)量子アニーリングをはじめ量子力学を利用すれば、計算をさせるにしても、うまい手法を利用して抜け道を見つけるかのように手早く計算を終えることもあるわけです。そうした潜在能力を組み合わせることによって、これまでにできなかったことができるようになる。このような事例が積み上がっていけば、人々は初めて量子力学に魅力を感じると思うんですよね。これまでの、常識とはかけ離れていてSF的なものである、という印象ではなく。

量子力学が不思議だと思われた発端って「原子と分子の様子を調べてみたら、何度やっても異なる結果になった」ところなんですよね。普通は「ノイズが入ったからだ」と考え、実験をやりなおすわけですが、何度やっても違う結果が、しかも半々で現れる。

ここで「そうか、なぜだかわからないけれど異なる結果が両方混ざっているんだな」と認めるところからはじめる。それで説明できる不思議な現象がたくさんあった。こういった成功により、量子力学をだんだんと自由自在に扱えるようになったわけです。

そこで登場したのが量子アニーリングマシン。重ね合わせの状態を作り出して、最適化問題を解くという方法として登場した方法を実装したのですが、実際にやってみるとそんなうまくいかない。だけどその結果、最善とは限らないけれでもいろいろな可能性があって、それを瞬時に出してくれる。これを利用して、複雑なものをうまく真似するシステムが作れるかもしれないところまで来ている。

これまでコンピューターの発展のおかげで、僕らは確実な計算や確信のもてる結果を追い求めて来ました。ところが、そうしたらそのコンピューターを手助けするのは、量子力学の性質を利用した、いろいろな可能性を検討する方法であり、あやふやなものをうまく扱う方法だった。なんだかおもしろいものです。

こうした技術が期待される背景には、とても複雑なものをうまく取り扱いたいけれども、コンピューターだけではカバーできない領域があって、そこをなんとかしたいという思いがあると思うんです。人間なんて複雑なものの極致ですからね、そんな簡単にわかるわけもないです

――なんだか安心しました。自分の気分とか感情を前向きに認められるようになりました。

婚活も、人生も、自分の中の量子コンピューターを信頼しろ!

――ところで、先生は、そういった学問的研究もしながら、日々の生活において決断もしていますよね。そのときは量子アニリーングマシンを使ったりはしてないですよね?(笑)

大関 自分の子どもの名前を量子アニーリングで決めようとしたことはありますよ(笑)。いい画数で、かつ自分の名前の一文字をとった名前をつけたいなと思って。結局、手作業のほうが早かったからやめたんですけど(笑)。でもそういうこともできるんです。

自分の人生での決断は、うーん、わからないけど、わからないなりに、まず決めちゃいます。大丈夫です、いくら悩んでも絶対わからないですから。それくらい世界は複雑だし、我々は無数の可能性をもっている。「それを考慮できるコンピューター」はもちろん存在しないし、最大限の重ね合わせをもてる量子アニーリングマシンでも無理です。

そもそも宇宙全体にある一つ一つの原子や分子がそのまま動いているのが宇宙です。つまり、宇宙の可能性を完全にシミュレートするには、もうひとつ、宇宙を作らないといけない。

というわけで、それは極端にせよ、結局人の人生をシミュレーションするなんてどだい無理なわけです。だから、自分の中で考えたことを信頼して、自分が「いい」と思ったほうを信じて進めばいい。自分が知り得る範囲でいろいろな可能性を自分なりに検討しているのですから、けっこういい考えだと思いますよ。

――先生は、量子アニーリングの研究を一通りやられたうえで、翻って「自分を信じる」ことにしたんですね。先生にそう言われると納得です……。

大関 もちろん、量子アニーリングは選択の手助けはできる。選択を絞り込むことはできます。テクノロジーってそういうものだと思います。つまり、「人間がよりよく生きるためのすべては委ねられないけれど、手助けになるもの」だと。

婚活で悩む人へ「まず考えて、そして決断して」

――先生のおっしゃることはよくわかりました。でも、実際に婚活で悩んでいる人……たとえば、私の友達で、婚活アプリで20人近くと出会ってる女の子がいるんです。その子はすごくかわいいし性格もいいので、いつも2,3回のデートまではうまくいくんですけど、なんとなく付き合うことにはならずに、また次の人を探すんです。その子は何がだめなんでしょうか。

大関 決断していないからですね。まず、仮置きして、やってみて、その結果を踏まえて、修正して、次はどうだと探る……。これは、従来のコンピューターと同じやり方なので、時間がかかって仕方ない(笑)。そのうちに人生がどんどん進んじゃいます

――うわあああ(笑)

大関 人生は有限。まずは考えて、本当に欲しているものを絞りましょう。そして、それに合う人を選んで、決断しちゃいましょう。

――今ある婚活アプリって、「年収◎◎万円以上」とか「長男以外」とか「趣味」とかで絞り込んでマッチングするんですけど、なんだかそれが良くない気もしています。

大関 そういった条件には、人間による「思い込み」が入る可能性もあります。私はそういう人じゃないとダメだって。だけど年収なんて変わっちゃうし、今はいいけど将来はわからない。長男かどうかなんて、家族の仕組みが変わってきた今では、なんとかできる問題かもしれない。趣味だって変わったりするでしょう。新しい趣味を二人ではじめてもいい。要するに変化が怖いだけなんですよ。

だけど過去のことに思いを馳せたら、けっこう自分って変化の連続ではありませんでしたか?変わらないところはまだ手付かずなだけで、それを変えてくれるのが将来のパートナーかもしれない。そういうことを期待したほうがよっぽど楽しいですよ。人生有限なのに、自分の可能性の探索範囲は非常に狭いなんてもったいない。広い宇宙で、さまざまな可能性があって、コンピューターであろうが、量子力学に頼ろうが、わからないものはわからないという、なんでもありのこの世界で。

可能性を広げることが大事だと思います。たとえば、条件のひとつを外してみると、もっといい結果が得られるかもしれませんよ。量子アニーリングマシンも、厳しい条件を言わずに解かせてみると、うまい解を見つけたりします。自分が変化すれば、世界の見方が変わりますから。

                       ***

「人生はコンピューターでも計算できないほど複雑だから、自分の直感を信じて決断しよう」……量子アニーリングの最先端の現場で研究する大関先生からの意外なメッセージに、心打たれるものがありました。この記事が、婚活や人生の選択で悩む読者に勇気を与え、前向きに考える一助となればうれしいです。