中国・深センには“ものづくり”のエコシステムがあった

中国・深センには“ものづくり”のエコシステムがあった

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こんにちは!mercari R4Dプロデューサーの相樂です。

デジタルファブリケーションを利用したものづくりや場づくりなどを担当しています。今日は、Mercari Tech Research制度を利用して訪れた中国・深センのレポートをお届けしたいと思います。

※Mercari Tech Researchとは?
実際に海外に行き現地のアプリやプロダクトを実体験することをサポートする、メルカリの企画者支援制度です。「好きな土地に好きなときに行ける」「旅費だけでなく通訳の費用も支援」などなど世界中の新しいサービスを試し、一次情報をインプットすることでその後のアウトプットに繋げることができる制度サービスです。

参考記事:世界で勝つために全額負担します。企画者支援制度「Mercari Tech Research」について

キャッシュレス化や無人化などで話題の深センですが、今回は少し視点を変えて「ものづくり」目線で深センの“メイカー事情”についてご紹介したいと思います。

メイカー(MAKER)って?

そもそもメイカーとは、そのまま「作る人=作り手」を意味しており、「第三の産業革命」とも言われるメイカームーブメント(Maker Movement)に参加する個人のことを指します。

メイカームーブメントとは、3Dプリンタやレーザーカッターなどのデジタル工作機器とインターネットの普及によってもたらされた新たなものづくりの潮流のことを呼び「MAKERS」の著者、クリス・アンダーソンにより定義された言葉です。

例えばコップが割れてしまったとき時、「お店で新しいコップを買う」から「コップのデータをオンラインで買い、各自が3Dプリンターで出力する」へ変化していくような、新しい産業や物流・消費の行動がメイカームーブメントによって生まれています。

深センのメイカースペース

それらのメイカーが集まる場所をメイカースペースと呼びます。「ものづくりができるコワーキングスペース」と考えるとイメージしやすいかもしれません。

深センには現在、主要なメイカースペースが5つほど存在しており、そのどれもが地下鉄やシェアバイクを使って短時間で回れるほどの距離に位置しています。

▲おしゃれなカフェでものづくりを楽しめるようなスペースも

実際に訪問してみた

いくつかあるメイカースペースへ、中国で普及している無料メッセージアプリ『WeChat』から急遽アポを取り(深センスタイル)、一箇所を実際に訪れることができました。電気街のInternational Maker Centerという施設の中にある、Trouble Makerというスペースです。突然の訪問にも関わらず設立者のHenkが丁寧に案内をしてくれました。普段東京で利用しているメイカースペースとどんな違いがあるのか、わくわくしながらエレベーターを降りると、見覚えのあるような大きなロボットのイラストが迎えてくれました。

Trouble Makerでできること

この場所では大きくわけて以下の3つのことができます。

1:プロトタイピング(試作作り)

レーザーカッターや3Dプリンタを使ったプロトタイピングから、電気系、簡単な耐久テストまでこのスペースで行うことが可能です。

2:資金調達

左に並ぶ社名はここから巣立っていった会社たち。右側はこのスペースの出資会社。(TencentやAmazonなど)スペースの利用者はいつでもこれらの会社にプレゼンを行う権利があるそうです。素敵!

3:量産

プロトタイピングと改善を繰り返し、20点ほどの完成品をここで制作。問題がなければ工場へ依頼をします。完成品を作る、つまり自分たちで組み立てまでを行うことで、実際の工程に問題がないかを確かめることができ、工場生産時の手戻りをなくすと同時に組み立て方等のノウハウを事前に持っておくことで、工場への依頼価格を安く交渉できるなどのメリットがあります。

ハードウェア開発のエコシステム

日本でも近年メイカースペースが普及しつつありますが、プロトタイプが完成したあと量産までの間には資金調達や工場の選定など、まだまだ大きな壁があります。

そのため、これら3つ(プロトタイピング、資金調達、量産)が同じ施設内で一貫して行えることはメイカーやハードウェアのスタートアップにとってとても魅力的な環境です。「商品の開発」→「資金を調達して量産」→「お客様に届けるまで」のサイクル、まさにハードウェアのエコシステムがここにありました。

また、メイカースペースは設備のみでなくコミュニティまでを含めて利用できるのも特徴。
豊富な経験と知識を持った他のメンバーがサポートしてくれるので、開発を進める中で生じる「作り方がわからない」「環境がない」「お金がない」などの様々な課題を全て解決することができます。また、施設のラウンジではお酒を片手にアイデアを交換しあったり、ガラス張りの個室で誰かの作成途中のプロダクトが覗けたり、隣のビルには商品の撮影スタジオまで併設されていたり…ここではもう「できない理由」を見つける方が難しそうです。

オープンソースという考え方

▲LEDとスピーカー機能を持った異なる2つのプロダクト。実は使用している内部のシステム、ソフトは全て同じなんだそう。

深センではシステムやソフト部分、時には金型さえも(!)オープンソースにして共有してすることが多いそうです。Henkは「1つのシステムから100ものプロダクトが生まれる。それが、深センがものすごいスピードで開発が行える理由だ」と話していました。まるでハードウェア界のgithubのようです。

深センに量産目的で行く場合は

深センのハードウェア事情を聞きつけて、日本からも日々たくさんの人が深センの工場を訪れているそうです。その際に、「とりあえず深センにいけばなんとかなる」とアイデアだけを持っていくのではなく、最終プロトタイプがあってこそ、始めて深センで量産ができるとのこと。とりあえず日本で300個くらいは作ってみて、大体の費用感を掴んでから深センで売ってみる。それがうまくいけば深センで量産というステップを踏むのがおすすめだそうです。

最後に、Trouble Makerの由来についてHenkさんに聞いてみました。(すごく気になる名前!)

「Trouble Makerの由来は、一つの思想に囚われず柔軟で、気になることをなんでも試してみる子どものようにトライ&エラーを繰り返していく人(場所)でいたいから。 人々が調べ物をするために図書館に行くように、アイデアを持ってTrouble Makerに来ればメンバーの知見をもとに助けてくれる、そんな場所としてコミュニティを育てているんだよ」ということでした。

日本も深センも、「ものづくりを通してコミュニティ作りをしている」という点では共通ですね。今回の視察を経て、「国が超えてもメイカースピリットは共通」ということを改めて知ることができました。

深センに視察に行かれる際は、これらのメイカースペースを訪れてみるのもおすすめです。電気街で売っている商品たちが、どのように誕生しているのかを垣間見ることができて楽しいです。私も次はぜひ、最終プロトタイプを持って訪れてみたいです。