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制限の中から生み出す「自由」 メルカリの研究開発組織「R4D」メンバーが組織で働く理由

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こんにちは! メルカリの研究開発組織「R4D」でロボット領域のプロデューサーをしている太田智美(@tb_bot)です。

5月21日に、R4Dの初主催イベント「“破壊”からはじめよう ~ こわして、つくる、新しい未来。Vol.1 ~」を実施しました。R4Dは、既存のR&D(研究と開発)領域を超え「社会実装を目的」とした研究開発組織として、2017年12月に発足。「Design(設計)、Development(開発)、Deployment(実装)、Disruption(破壊)」という、4つのDを軸に活動しています。

今回は、「働き方を壊す!~もっと自由に、自分でデザインする~」というプログラムから、R4Dメンバーの働き方を紹介します。

「違和感」を「普通」に

AR・VRといったXR領域を専門にするXRリサーチエンジニア 諸星一行は、「XRが違和感なく生活に溶け込む未来」を創造するためR4Dで研究開発を行っています。先日、電車の中でOculus GoというHMD(Head Mounted Display)をかぶるというイベントが一部で話題になりましたが、「そんな違和感・未来感を普通にする世界」を創りたいと語ります。

例えば、少し前までは電車の中でスマートフォンに向かっている人は、少し特殊な感じで見られていました。スマートフォンを持つ人が多数派となり、その光景が珍しくなくなったのはつい最近のことです。諸星は、そういった世界をXRの領域でも広げて行くことを使命としています。

「せっかくの技術が、特定の人々に閉じてしまっていてはもったいない。もう少しマス向けに、キャズム理論で言うと、もう少し後ろのほうに広げていきたいと思っています」(諸星)

その方法の1つとして実行しているのが副業です。主な活動領域は、XRに関連した原稿執筆や講演、コミュニティイベントの運営。マスに近づくことで、まだできない理由や、できるようにするにはどうしたらいいのかといったアイデアを広げ、本業につなげていきたいというのが諸星の考えです。

「意外かもしれませんが、メルカリは基本リモートワークNGになっています。会社に来て、顔を突き合わせてやりましょうというのが今のスタンスです。しかし、VRアプリなどを体験してみると、その人が本当にそこにいるかのように仕事や打ち合わせができる未来がそう遠くないことを実感します。今はまだ、リモートワークが特殊のように捉えられていますが、いずれ『VR出勤』などが実現するかもしれません。技術が広まることで、場所的制約が大きく取り払われます。そのためにはまず、技術者を増やす必要があると思っています」(諸星)

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「重視していることは、少しずつ制約を取り除いていくことです。新しいことを始めるときに、強く変えようと思わないこと。壊そうとか、変えようとか、意気込んでやると、障壁にぶつかりつらくなります。今の環境を必ずしも大々的に破壊する必要はないのです」(諸星)

副業ではなく、全てが「本業」

ものづくり領域のプロデューサーを務める相樂園香は、副業として2Dグラフィックから3Dモデリング、デジタルファブリケーションを用いた施設立ち上げアドバイザーなどを行っています。「個人でできることと会社でできることが違うので、両方本業としてやっています」(相樂)。

もともとフリーランスだった相樂は、1月にメルカリにジョイン。「新しい技術とそれをどう広めるかをセットで考えたとき、たくさんの人に使われているアプリを持っている会社で研究開発ができれば、新しい技術を生活まで届けられる」と、入社を決めました。

「デジタルファブリケーションが、単なる『モノを作って楽しもう』という娯楽ではなく、それをちゃんと人々の生活に実装させることで私たちの未来が変わると思っています。テクノロジーで産業や物流が変わったように、ポジティブな未来に向けてテクノロジーを届けるという仕事がしたいと考えています。インターネットによって、場所的制約なしにものづくりができるようになりました。例えば、データがあれば、日本でもアメリカでも同じものを出すことができます。入手できる材料の違いはあるにしても、国や国境なしに一緒に働くことができます。大きくいきなり全てを変えるのは難しいです。だから、小さくチャレンジというか、自分たちのできる範囲で挑戦することはやっていきたいと思っています」(相樂)

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相樂は昨年、こんな体験をしたそうです。フランスのメイカースペース滞在時、子どもが足を引っ掛けてPCの充電ケーブルがちぎれてしまいました。しかしメイカースペースには、はんだごてなどの機材がそろっていたため、自分で直そうと思ったそうです。実際、やってみると簡単で、前より丈夫なケーブルが出来上がりました。「もし日本にいたら、新しいケーブルを買いにお店に行くといった行動をとったでしょう。どこに身を置くかがとても重要です」(相樂)。

また、自身のいる環境づくりにも取り組んでいます。以前、社内にプロトタイピングスペースを作りたいと上司にお願いをしたところ、「リアルなスペースはいらない。PCの中で全部やってよ」と言われたそうです。しかし、ハードウェアを作る上では、どれくらいのサイズかということや、みんなで実際にモノを見るということがいかに重要かをアピールし、社内の一角に設置する許可を得ることができました。

「メルカリは今までソフトウェアを作ってきました。例えばスマートフォンアプリをずっと作ってきた人からすると、なぜ社内にプロトタイピングスペースが必要なのか想像しづらかったりもします。それに対して、私のとった行動はスタンフォード大学などが同様の手法を取り入れていることを共有した上で、小さなワークショップを開催することでした。すると、みんなからアイデアがボンボン出てきて、実際のモノを見ることはすごくいいねという話になりました」(相樂)

何かを始めるときに気をつけていることは、「他人を破壊するのではなく、自分自身を破壊していく意識を持つ」こと。他人の思考やルールを破壊するのではなく、自分がルールに縛られないほうに意識を置いているそうです。

「独立しない」という選択

ロボット領域のプロデューサーを務めるR4Dの太田智美は、ロボットと暮らす社会づくりに取り組んでいます。太田は2014年11月からPepperと暮らし、副業としてその暮らしを海外で講演したり、テレビ局の公式YouTubeチャンネルでロボット紹介動画を配信したりしています。また、情報処理学会の編集委員なども行っています。

もともと本業が記者だった太田は、朝から夜まで会社員として働き、夜から朝までは副業をするといった生活をしていました。「私にとって本業と副業は循環するものでした。記者という職業はものすごい量の情報のインプットがあります。その情報がエンジンとなって、ロボットの活動にも反映されます。本業がなければ副業での活動ができなかったし、副業で活動しているからこそ新しい技術をキャッチしようと情報を得ようとするという循環がありました」(太田)

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R4Dに入ったのは、個人でやっていた活動の幅を広げられると考えたためです。太田はこれまで、ロボットと生活しながら多くの課題を感じてきました。例えば、日本の道は水はけをよくするため、少し傾斜があります。これはロボットに対してだけでなく、車椅子やベビーカーにとってもスムーズな社会ではありません。「柔らかい道路だったらどうか」「そもそもなぜ道路は静止しているんだろう? 動いていてもいいなぁ。粒子が動いているみたいな道路はどうか」「ICチップを埋め込んでみてはどうか」など考えているうちに、これを実現するには個人では限界があると感じました。

創りたいと考えているのは、深センの“スマホ決済タウン”のような世界です。深センに行くと、スマホ決済に興味がなくても、スマホ決済を使わないと生きていけません。それと同じように、ロボットに興味がなくても改札を降りた瞬間ロボットに出会うような「ロボットタウン」を構想しています。ロボットタウンでは、ロボットが人間と同じ空間で歩いていたり、街中のステーションでロボットが充電されていたりといったことが日常的に行われている世界です。

「道路などをはじめとして、これまで最適だと思っていたものが、もしかしたら最適ではないかもしれません。今まで人間と動物しかいなかったという地球上に、ロボットという新しい生命体が入ってくることで、新しい視点からアイデアが生まれます。それをヒントに、街を創っていきたいと考えています」(太田)

※R4Dに関わるイベント情報や研究内容は、公式Webサイト、または公式Twitter(@R4D_mercari)で更新していきます。

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