こんにちは! メルカリの研究開発組織「R4D」でプロデューサーをしている引地菜摘です。
5月11日、COLONY箱根という緑豊かなワークスペースにてERATO川原万有情報網プロジェクトの合宿が開催され、R4Dを代表してオフィサーの山村と一緒にプロジェクトメンバーとのディスカッションに参加してきました。
ERATO川原万有情報網プロジェクトは、R4Dで共同研究している東京大学大学院 川原研の川原 圭博先生が総括をしていて、生活に溶け込むIoTの研究をしています。
今回、山村はゲストとして登壇し、R4Dの紹介と移動から考える街づくり、モビリティ開発についての考え方や目指したい姿、ディスカッションのヒント等をお話させていただきました。
移動手段から考える街づくりとは
山村は「みんなが容易に考えつくような街をデザインしてもつまらない。街を構成する要素はいろいろある中で、移動をテーマに街をデザインするとどうなるかを考えていきたい」と語りました。
そもそも「移動」とは、ある地点から目的地までに行くことを指します。その移動のための手段に、徒歩や自家用車に加えて、電車や飛行機などの公共交通機関、さらに現在ではメルチャリやUBERなどのシェアリングサービスもあります。このように移動手段には様々な選択肢がありますが、これらを技術的に実現するために考慮しなければならない要素もたくさんあります。
「例えば、即時性。特に急いでいる場合に、この待ち時間がどれくらい発生するかは重要になります。他にも、移動時間(目的地までの時間)、手段(どの方法がベストか)、経路(どの道がベストか)、安全性(事故可能性)、ロバスト性(遅延可能性)、コスト(交通費)、人数などがありますが、これらは機械学習などで最適化されつつあります。」
それでは改めて、機械学習で最適化できない未来の移動手段はどうなっていくのでしょうか。
R4Dが考える未来の街とは?
「既に実証実験が進められている移動手段の領域として、海外では空飛ぶ車やタクシーがありますね。日本でも議論がある、自動運転車もそうです。イーロン・マスクが提唱しているロケットでの移動などもあります。これらの事例よりも新しい移動手段を考えるとしたら、実現可能性を取っ払い、もっと違う視点から物事を見てみると良いかもしれない」と山村は話します。
「例えば、地面が隆起したら目的地まで転がって移動できます。また、道路が流体になれば流れに乗るだけで目的地に到着できます。竜巻をおこせばその中に入って運んで貰うことができますーーなどなど。実現可能性を考えずにアイディアだけ出せば色々なことが考えられるのではないでしょうか。」
さらに、「空飛ぶタクシーや竜巻などのアイディアでは考慮していない要素があって、それは資源やエネルギー。コストがかかる割に輸送量が少ない、資源はどこから入手するのか、エネルギーの担保はどうするのか、竜巻はどうやって起こすのかなど考えなければならないことはたくさんあります。それを考慮したときにこれらのアイディアは最適なのでしょうか。」とも付け加えました。
また、山村がもう一つ指摘した点は、いま当たり前に存在している街は本当に私たちにとって最適かどうかという点。みんながそれぞれ追求し、開発したモノが混在する街は最適とは言えないのではないか、とも語りました。
山村は、街づくりにおけるR4Dの未来像について以下のように締めくくりました。
「R4Dは世の中のどの部分を最適化するかを共同研究先と共に考えていきたいです。街づくりにおける課題はたくさんあるけれど、課題が多いほうがワクワクします。未来は、よりなめらかでインタラクション(相互作用)が適度なシステムをつくりたい。数人に届けるテクノロジーではなく、100万人に届けるテクノロジーを考えていきたいと思っています。」
自分の研究が世の中にどうアウトプットできそうか?
その後、山村のスピーチにあった考え方のヒントを取り入れながらそれぞれが興味がある分野に分かれてディスカッションをしました。ワークのテーマは次の5つです。
移動:都市生活やオフグリッドにおける移動
資源の入手・活用:日常生活におけるエネルギーや各種資源の利用の未来
食・農・水: 農業イノベーションと未来社会
多様性: 超高齢化社会におけるWearable/Implantableの役割
超効率:インフラ/家・不動産/産業機器などの超効率活用
興味がある分野と自分の研究がどう結びつくか、他の研究領域からの視点はどうなのかを念頭に、活発なディスカッションが繰り広げられていました。どんなアウトプットが出たかはお伝えできませんが、面白いアイディアがたくさんあり、とても勉強になりました。
最後に、川原先生からこんなメッセージがありました。
「合宿の意義はプロジェクトの共通のミッションをみつけることと、お互いの人となりを知ること。また、帰り道の余韻で反芻しながら自分の研究技術が、どんな分野で役立つのか?例えば、農業で使えるのではないか?など、様々な可能性を考えて欲しいと思います。」
私たちR4Dもいま取り組んでいる研究がどんな分野で活用できるのか、想像力を働かせて、よりよい未来を作れるようこれからも考え続けていきます。