この度、メルカリAIチームのエンジニア 大橋 耕也・関根 翔・Deddy Jobson・Jie Yangによる論文「Strategic Coupon Allocation for Increasing Providers’ Sales Experiences in Two-sided Marketplaces」が、データマイニング分野の国際会議であるKDD2024のWorkshop on Two-sided Marketplace Optimization(TSMO 2024)に採択され、発表を行いましたことをお知らせいたします。
本研究はメルカリの研究開発組織である「mercari R4D」が支援をおこない、筑波大学との共同にて研究を行いました。
KDDは、データマイニング分野で最も権威ある国際学会の一つであり、世界中の研究者らによって毎年開催されています。本年は、スペインのバルセロナにて、2024年8月25日から29日まで開催されました。
発表内容のポイント
Strategic Coupon Allocation for Increasing Providers’ Sales Experiences in Two-sided Marketplaces
今回の発表では、できるだけ多くの出品者に商品の売却体験を提供するためのクーポン配布戦略を提案しました 売却体験を通じて満足度が向上すれば、ユーザーは積極的に出品を続ける可能性が高まり、プラットフォームの魅力や、出品される商品の量と多様性が、さらに向上することが期待されます。
研究の背景
メルカリのようなCtoCマーケットプレイスでは、プラットフォーマーが直接的なサプライチェーンを持っていないため、出品商品の量や種類を増やすためには、個人の出品者の自発的な出品活動を促進する必要があります。出品行為には、商品の選定や撮影、売却後の梱包など一定の労力がかかるため、出品者がアクティブに行動するためには強いモチベーションが不可欠です。出品モチベーションに影響を与える要因は個人によって異なりますが、最も根本的かつ重要な体験は「売却体験(商品が売れること)」であると考えています。そのため、できるだけ多くのユーザーに売却体験を提供することが重要です。
しかし、メルカリのような二面市場(Two-sided market)においては、プラットフォーマーによる適切な介入が行われないと、トランザクションが一部のユーザーに偏るリスクが指摘されています。そこで、我々Data Scienceチームでは、最もよく用いられるマーケティングツールのひとつであるクーポンを活用し、トランザクションの偏りを解消することで、より多くの出品者に売却体験を提供することを目指しました。
研究概要
本論文では、売却体験ユーザー数をKPIとしたクーポン配布戦略の最適化手法を提案しました。一般的に、クーポン配布を特定のKPIに対して最適化するためには、対象ユーザーへのメリハリのある介入が必要となります。Uplift modelingと数理最適化を活用して、効率的なクーポン配布戦略を提案しました。
提案手法を活用することで、従来の方法に比べ、より多くの出品者が売却体験を得られることをメルカリの実データで確認しました。この手法の運用により、多くの出品者の満足度が向上し、個々の自発的な出品行動の促進が期待されます。
Data Science Teamについて
メルカリのData Scienceチームでは、統計学、機械学習、数学的最適化などの技術を駆使して、顧客理解分析やマーケティング活動の効率化、さらにはプロダクト機能の開発を行っています。
mercari R4Dについて
「mercari R4D」は2017年12月に設立した、社会実装を目的とした研究開発組織です。「まだ見ぬ価値を切り拓く」というミッションのもと、メルカリが目指す限りある資源を循環させ、あらゆる人が可能性を発揮できる社会の実現に向けて、産業界やアカデミア、国といった枠を超えてコミュニティをつなぎ、科学技術の力で複雑な社会課題を解決するCo-Innovation的アプローチを推進しています。
※本記事は、mercari AIブログから引用しています