header image

NEWS

大阪大学ELSIセンターとR4D量子情報技術チームで作成したELSI NOTE No.29『「量子の未来」をめぐる23の話題』が公開されました

ELSI
Top>大阪大学ELSIセンターとR4D量子情報技術チームで作成したELSI NOTE No.29『「量子の未来」をめぐる23の話題』が公開されました

大阪大学社会技術共創研究センター、通称ELSI(エルシー)センターとともに作成したELSI NOTE No.29『「量子の未来」をめぐる23の話題: 株式会社メルカリR4D量子情報技術チームへの重点的グループインタビュー』が8/18(金)に公開されました。

公開ページ: https://elsi.osaka-u.ac.jp/research/2366 (本文はこちらのリンクから確認できます)

本記事では、ELSI NOTE No.29の概要や公開の意義、執筆者からのコメントを紹介していきます。

*ELSI: Ethical, Legal and Social Issuesの頭文字をとったもので、倫理的・法的・社会的課題を意味します

ELSI NOTE No.29『「量子の未来」をめぐる23の話題』の概要

ELSI NOTEとは、大阪大学ELSIセンターが発行している文書で、国内外のELSIに関する研究・実践活動の最新動向を紹介しています。

今回公開されたELSI NOTE No.29は、2022年12月から2023年3月にかけて合計10回実施された、ELSIセンターの研究者からR4Dの量子情報技術チームへの「量子の未来」に関するインタビューをまとめています。その内容は、下記23の話題と、5つのカテゴリに分類されます。量子情報技術の現状と展望、挑戦と検討すべき課題、人文社会科学系の専門性を持つ研究者も含めた「量子人材」の育成、社会におけるイメージの生成と普及、悪用・疑似科学をはじめとした量子情報技術に関する懸念など、量子情報技術が今後の社会にもたらし得る多様な影響について深く探求しています。

  • カテゴリ1:量子情報技術がもたらす変化をめぐる話題
    • 話題1. バイ・デザイン方式による社会的課題の解決
    • 話題2. 身近なアプリケーション
    • 話題3. 暗号化技術の発展によるセキュリティ課題の解決
    • 話題4. 従来技術に対する量子コンピュータの利点:素因数分解と最適化問題
    • 話題5. SDGs等への貢献
  • カテゴリ2:量子情報技術の克服すべき課題をめぐる話題
    • 話題6. テストベッド・エコシステムの構築
    • 話題7. 競争か、協力か?
    • 話題8. 標準化の文化:デファクトとデジュール
    • 話題9. ベンチマーク:量子ボリューム
    • 話題10. 利用しやすいシステムとアーキテクチャの設計
    • 話題11. 量子の制御にまつわる困難
    • 話題12. 「広く薄くばらまく」段階と「選択と集中」の段階
    • 話題13. ELSIを含む量子情報技術ロードマップの作成
  • カテゴリ3:量子情報技術の人材をめぐる話題
    • 話題14. 量子人材に必要なスキルセット
    • 話題15. 人材像の具体化
    • 話題16. 人材のサーキュレーションと日本の研究環境の特殊性
    • 話題17. 人文社会科学系を含めた量子人材の裾野の拡大
  • カテゴリ4:公共における量子のイメージをめぐる話題
    • 話題18. パブリックダイアログの実施による量子イメージの現状把握
    • 話題19. 文学やフィクション等による社会的イメージの形成と普及
    • 話題20. ハイプ(過剰な期待)とロックイン
  • カテゴリ5:量子情報技術の懸念をめぐる話題
    • 話題21. 悪用・ハイリスク利用・デュアルユース
    • 話題22. 境界的領域・擬似科学の生成
    • 話題23. 格差や不平等の拡大

ELSI NOTE No.29公開の意義

量子情報技術の分野では、これまで科学技術的な課題や応用のトピックについて多くの議論・研究が行われてきました。経済効果なども取り沙汰されるようになった一方で、量子情報技術が社会実装される際にどのような影響を社会に与えうるのかという観点は、重点的に議論されてきませんでした。

量子情報技術の発展は、コンピュータやインターネットなど現代社会のインフラに大きな影響を与える可能性を持っており、社会実装によるその波及効果も非常に大きなものになると考えられます。それはもちろん良い影響だけでなく、ELSI(倫理的・法的・社会的課題)をはじめとした新たな課題も多く生まれることを意味しています。人々が安心・安全に量子情報技術の恩恵を受けられ、適切な社会変革をもたらすために、社会との対話を通じて、どのような課題が起こり得て、それらにどのように対応していくかを研究開発の早期の段階から明らかにし、検討していくことは非常に重要です。

今回のELSI NOTE No. 29では、量子情報技術の社会的課題に関する議論から論点を抽出し、「量子と社会の未来」に関する5カテゴリ・23の話題としてまとめました。社会から量子情報技術への期待が高まり急速に研究開発が進むなか、本文書が、量子情報技術のELSIについて技術発展と並行して活発に議論されるきっかけや、その議題の叩き台としてお役に立てれば幸いです。

執筆者コメント:mercari R4D シニアリサーチャー・永山、リサーチエンジニア・寺元

mercari R4Dの研究開発は、知の探求や技術の発展に全力で努めると同時に、社会実装を見据え広い視野を持つことも重要視しています。量子情報技術のような革新的先端技術が世に浸透して大きなイノベーションを起こし、われわれ一人ひとりが利益を享受するためには、その革新性ゆえに生じ得る社会的ハレーションや新たな問題の発生を事前に防ぎ、あるいは最小化し、現代社会を生きる全ての人が安心・安全を感じながらその技術や変革を受け入れられる状況をつくることが大切です。そのような観点から、mercari R4Dは、特に大きなハレーションを起こし得る領域として量子情報技術のELSIに取り組んでいます。

今後もmercari R4D は、量子情報技術はもちろん、他の研究領域におけるELSIについても研究・発信を続けてまいります。

TOP