メルカリ・東京大学の包括連携プロジェクト「価値交換工学」に所属するMoon氏(文 多美、工学系研究科・都市工学専攻 特任研究員)が執筆した「Promoting sustainable practices: Exploring secondhand clothing consumption patterns and reductions in greenhouse gas emissions in Japan」が「Sustainable Production and Consumption(Volume 45)」で公開されました。
全文は以下からアクセスできます。
https://doi.org/10.1016/j.spc.2024.01.007
論文の概要
日本ではオンラインフリーマーケット(フリマアプリ)の台頭により中古品へのアクセスが拡大しています。一方で、持続可能な消費をする必要性があるという認識が高まっているにもかかわらず、消費者が中古品を受け入れることに課題が残っています。そこで、本研究は持続可能な消費生産システムの実現に向けて、中古品の有効な利用可能性に焦点を当て、それによる環境への影響を評価します。
具体的に、日本のフリマアプリメルカリのユーザー(出品者:n = 13,325人、購入者:n = 9,985人)を対象に、新着・古着の利用パターンを調べ、新着対比古着利用からなる環境負荷削減への貢献量(環境負荷削減貢献量)を推計しました。
研究から得られた成果として、まず、様々なアイテムに対する中古品の利用の特徴を明らかにし、状態が悪い商品でも使用期間が延びたことを確認しました。また、中古品は新品よりも使用頻度が高く、購入者は潜在的な損傷に対する懸念が少ないことが示されました。製品の状態が悪化しても、古着を新品の服に買い替える割合は有意に減少しませんでした。
さらに、新品に代わって1,000万点の古着が使用されると仮定すると、二酸化炭素換算で約9.6千トンを削減できる可能性があると推定し、中古品を利用すれば環境保全に貢献できる可能性を提示しています。この研究から、中古品の環境面での重要性を明確にするために必要な理論的基盤を確立すると同時に、持続可能な消費活動の広範な影響に関して貴重な洞察も提供しています。
執筆者のコメント(Moon氏)
中古品の消費は、大量生産・大量消費・大量廃棄の社会システムの反省から資源循環(サーキュラーエコノミー)による持続可能な消費システムを実現する消費手段の一つとして位置づけられています。
本研究は、新品の代わりに利用する中古品の消費について、Q1. 中古品と新品の利用に違いがあるのか、Q2.新品の代わりに中古品を利用するときに環境負荷の削減効果はあるのか、といったリサーチクエスチョンから研究を進めたものになります。
今後の展望として、金銭的な観点から中古品の消費価値を分析し、中古品消費から得られる経済面での利益から環境貢献につながる方向性について把握する予定です。これらの研究は、持続可能な消費システムの実現に貢献できる中古品消費への具体的な取組みの提案に有効だと考えています。
※本研究については以下の記事も合わせてご覧ください。
メルカリ・東京大学の包括連携プロジェクト「価値交換工学」:https://www.riise.u-tokyo.ac.jp/research_programs/vxe
※本研究に関するお問い合わせは、R4D Web内コンタクトページよりお願いいたします。