人工知能振興学会(AAAI, Association for the Advancement of Artificial Intelligence)が2026年1月20日~27日にシンガポールで開催する人工知能分野のトップカンファレンス「The 40th AAAI Conference on Artificial Intelligence(AAAI-26)」に、R4Dと東京大学インクルーシブ工学連携研究機構(RIISE)の社会連携研究部門「価値交換工学」に所属する河瀬康志特任准教授の論文が採択されました。
論文情報
- 論文名
- Sequential Selling with Sunk Cost Bias
- 執筆者
- 河瀬 康志(Yasushi Kawase、東京大学 価値交換工学 特任准教授)
- 仲吉 朝洋(Tomohiro Nakayoshi、東京大学大学院情報理工学系研究科 修士課程(当時))
- 概要
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本研究は、日次の保有コストcが発生する逐次販売問題(最適停止問題)において、過去の累積コストc(t−1)に引きずられる埋没費用バイアス(感度 λ)の影響を理論的に分析したものである。まず、t日目に価格Xtで売却した時のエージェントの主観的効用を Xt−λc(t−1) と定義し、バイアスの強さを数理的に定式化した。その上で、自己のバイアス進化の予見性に基づき、エージェントを「楽観(今日はサンクコストが気になるが明日の自分は合理的に判断できるはず)」「素朴(これからも今と同じ感じで判断するだろう)」「洗練(明日の自分もサンクコストに引っ張られるだろう)」の3タイプに分類した。分析のアプローチとして、バイアスのないエージェントと比較した際の「最悪ケースにおける客観的利益の差(損失)」を算出している。従来のグラフ構造上の到達報酬を扱うモデルとは異なり、報酬が動的に変化する逐次販売の枠組みを採用した。合理的なエージェントとの期待客観利益のギャップを、時間軸Tの関数として定量化した点に新規性がある。解析により、以下の結果を導出した。
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楽観タイプ:将来の自分は合理的だと誤認し、過去のコストを回収すべく販売閾値を直線的に高める。最悪ケースの損失はλc(T−1)(T−2)/2 となり、時間に対して二次関数的に悪化する。
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素朴タイプ:意思決定プロセスにおいてバイアスが相殺されるため、合理的個体と同一のポリシーに従い、期待利益の差は0となる。
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洗練タイプ:将来のバイアス蓄積を予見して早期売却を図ることで、損失を λc(T−1) の線形関数に抑制する。
逐次販売問題にサンクコスト・バイアスを導入し、タイプ別に利益損失を数理的に特定することに成功した。
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AAAI-26の開催概要
- 開催日時
- 2026年1月20-27日
- 場所
- Singapore EXPO
- イベントページ
※価値交換工学の関連ページ:https://r4d.mercari.com/vxe/
