皆さん、こんにちは! そしてはじめまして。
mercari R4DでPRを担当している海野(@umikokun)です。 前職では女性向けメディアのプロデューサーをしていましたが、 テクノロジーの可能性をもっとたくさんの人に伝えたい!という思いから、今年の2月にR4Dにジョインしました。
今回から私PRの海野が、みなさんにR4Dがどんな組織なのかを知っていただくために、R4D研究員メンバーを1人ずつご紹介していきたいと思います。
R4D(アール・フォー・ディー)とは?
まずはじめに、R4Dの特徴をちょっとだけご紹介させてください。
R4D(アール・フォー・ディー)とは、昨年12月に株式会社メルカリ内に設立された「社会実装を目的とした研究開発組織」です。 R4Dには、研究(Research)、そして4つのDの要素として設計(Design)・開発(Development)・実装(Deployment)・破壊(Disruption)という意味が込められています。
この組織の大きな特徴は以下の3つです。
研究分野は主に、AI(人工知能)やブロックチェーン、VR(バーシャルリアリティ)/AR(拡張現実)、 Iot(モノのインターネット)など。いまホットな技術を中心に、 どのようにして私たち人間の生活をより豊かにしていくのか(=社会実装していくのか)を考えている組織です。
このシリーズでは、この組織の1つの特徴でもある、個性的かつスペシャリストなR4D研究員メンバーを紹介していきます。 第1回はこのチームを引っ張るリーダー、R4Dオフィサーの山村亮介(やまむら・りょうすけ)です。
昔は自動車のエンジンをつくっていた
---やまちゃん(※山村のチーム内での愛称)、今日はよろしくお願いします! さっそくですが、R4Dに入る前は何をしていたんですか?
山村亮介(以下、山村):よろしくお願いします。 新卒でデンソーという会社に入って、自動車のエンジンに関わる仕事をしていました。 具体的には、コモンレールシステムというディーゼルエンジンの燃料噴射システム、 その中でもエンジンに燃料を噴射し燃費や排ガス性能を決める「インジェクター」と呼ばれるコンポーネントの設計をしていました。
---専門用語が多い!(笑)すみません……。正直、何を言ってるのかさっぱりわかりませんでした……。 もう少し噛み砕いて教えてもらってもいいですか?
山村:(笑)。たしかに普通の人には聞きなれない言葉ばかりかもしれませんね。
燃料というのは、そのままだと液体でしかないんですが、そこに強力な圧力をかけることで細かい粒子が作り出されます。 ホースから水を出しているときに、出先をつまむと水の粒が小さくなりますよね? その原理と似てます。燃料は、その粒が霧のように細かければ細かいほど燃えやすく、排ガスが少なくなるんです。 でも、小さい粒を作るためには相当な圧力が必要で、つまりはそれに耐えうる装置をつくらないといけない。 かつ、10万分の1秒という超高速な噴射を実現しないといけません。けっこう大変な仕事で、車のエンジンにとっては最も重要な部分なんです。
僕に”一生の使命”が生まれた瞬間
---そもそも、どうして自動車のエンジンをつくることになったんですか?やっぱり車が好きだったとか?
山村:何かにのめり込みやすい性格かとは思うんですが、別に車が好きだったとか、 ロボットが好きだったとか、そういうことではないんですよ。 敢えて言うなら、僕は将来、持続可能な社会をつくらないといけないという使命感を持っていたんです。
---と、言うと?
山村:JR福知山線の脱線事故を覚えていますか?
---とても悲惨な事故でした。今年(2018年)であの事故から13年ですね。
山村:実は大学へ通うとき、僕も福知山線の先頭車両によく乗っていたんですよ。 事故の起こった線路は、当時から僕も含めて周りの大学生たちも カーブがキツいから危ないよね」「スピード出しすぎじゃない?」という話をしていたんです。
---多くの人が、起こる前からあの事故を予期していた、と。
山村:はい。本当にショックでした。一歩間違えたら、自分も死んでたのかもしれない。 そして自分と同じように将来があった大学生も含めて、107人の命が奪われてしまいました。
それまでは、ある意味利己主義というか、“自分ありきな人生”を送ってきていたんです。 でもあの時から、「どうやったら人が悲しまない世界を作れるのだろう」と考えるようになりました。 自分のための人生から、「他人のために意思を貫く人生」というふうに見る方向が変わった気がします。 物理がすごく好きだったので、研究者になりたいという気持ちも捨てきれませんでしたが、優先したのは「もっと人の役に立つ仕事がしたい」という気持ち。僕の原点は、亡くなった107人に顔向けできる人生を送ろう、というものなのです。
---それが原点?
山村:「人の役に立つこと」の中で最初に関心を持ったのが「気候変動」でした。 デンソーでは、「エネルギーを活かしきる」「外の空気よりもきれいな排ガスをつくる」というビジョンがあったので、 それにに共感し、自分もその最前線でCO2を減らさなければという思いで入社を決めました。 それと同時に、107人分の人生を生きるのに、日本だけを見ていて良いのか?と。 世界に対して何かしていかないと、という思いもそのときに膨らんでいきました。
R4Dにできることって何だろう
---あくなき情熱! ところで、R4Dオフィサーって普段どんなこと考えているんですか?
山村:R4Dは社会実装を目的とした研究開発組織です。 4つのDの中で僕が最も重要だと思っているのが、「Disruption(破壊)」。 新しいものを生み出すためには、必ず既存の価値観や仕組みを壊していく必要があります。 つまり、R4Dが壊すべきものとして「世の中の課題は何か」を常に考えています。
---具体的に言うと?
山村:色んな人の立場になって考えるってことだと思います。 たとえば、世界に目を向けると、同じ人間として地球に生まれて来ているのに、苦しんでいる人たちがたくさんいます。 途上国では環境汚染でたくさんの人が亡くなったり、化学繊維で染めた服で肌がただれてしまったり。 「人が笑顔でない時ってどんな時だろう?」ということを想像すること。 ひょっとしたら僕のエゴかもしれないけれど、どうすれば解決できるのかな?R4Dでできることはないかな?っていつも考えています。
---いま、注目している課題はありますか?
山村:いま思いつくもので、3つあります。 1つは、安全な水を飲めてない人が世界に25億人いるということ。 安全かどうかもわからないままその水を利用し、子どものうちに亡くなってしまっているのが実情です。 ここで難しいのが、水がきれいすぎるとダメなんです。 普段飲んでる水とあまりにも違っていては、そこにいる人たちは受け入れてくれない。 やはり、その人の立場になって考えることが重要だと思います。
2つ目は、ヘルスケアサービスにアクセスできてない人が世界の20%もいるということ。 病気になっても救ってもらえない人が、世界には10億人もいます。これは1つに、医療が高すぎて普及しないという課題があります。もっと手軽に利用できる医療器具があれば、お金のない国にも医療を届けられるかもしれません。たとえば、心電計ひとつとっても、先進国で設計するとものすごく高いんですね。これをインドで設計したら、ムダのない低価格な心電計が出来上がって、先進国でも流行ったという例があります。
---余計な機能がついているせいで、医療費が上がっている可能性もあると。
山村:そう。僕たちが便利さを求めすぎたせいで、効率が悪いものって結構あるんですよね。 こういうものを「破壊」していく必要があるのではないかと。
---3つ目は?
山村:持続可能な社会を実現するために最も重要なのは、電気です。 2018年の今でも、世界には電気の届かない人たちが14億人もいると言われています。
地震大国日本にとって、エネルギーも大規模集中型のモデルでは脆弱ではないかと思っています。 ある意味ブロックチェーンでいう分散型的に、“街だけのインフラ”をつくったほうが何かあったときも復旧しやすい。
また、インフラのない地域で新たにインフラを作っていくのには、ものすごく時間とお金がかかります。 地域に根ざすなら、その地域ですぐに使える自然エネルギーのほうが有効です。 いまはまだ、僕たちが自然のエネルギーを有効に使い切れていないだけだと思っているので、 R4Dでは再生可能エネルギーの分野にもどんどん挑戦していきたいですね。
R4Dに大切なのは「自由であること」
---最後に、R4Dという組織が一番大切にしていることって何ですか?
山村:一人ひとりが自由であることだと思います。 押さえつけられる、考えを合わせるというのはあまり良い状態ではないのかな、と。 R4Dのみんなが、もっと自由に、自分の好きな未来を描けるようにすることが、 オフィサーである自分のミッションだと思っています。もちろん、自由には責任が伴います。 だからこそ、自走できる人、具体的な未来を描いている人と一緒に仕事がしたいですね。 R4Dは様々な分野の専門性の高い人たちばかりです。 僕自身も、量子コンピューターやVRなどは、自分の専門性がまったく通用しないという意味で、みんなから学ぶことがとても多いです。 社会人であっても、お互いに学び合えるこの環境が、僕は好きですね。
---共同研究先であっても、これからR4Dにジョインするメンバーであっても、そういう人たちと一緒に未来を見ていきたいですね。 ありがとうございました!