フリマアプリ上で行われるコミュニケーションの最適化をすすめることがこのプロジェクトのミッションです。 メルカリはD&I(Diversity and Inclusive)を掲げて、多様なバックグラウンドを持つお客さまそれぞれに使いやすいサービスを展開したいと考えています。その目標に向けて、お客さま同士や事務局とお客さまとのコミュニケーションを快適にし、お客さまにとっての「使いやすさ」を追求しています。
フリマアプリでの商品売買はリアル店舗とは異なるコミュニケーションスタイルで行われています。リアル店舗では品物を実際に手にとりその品質を知ることができ、また、売り手や買い手がどのような人物で、信頼できるかどうかも判断できます。一方、フリマアプリでの売買は、非対面・非同期であり、商品を売買する際に必要な情報を得るためのコミュニケーションモードは、商品の画像と文字で書かれたメッセージに限られます。とくに、画像では伝えきれない商品の状態の説明や、売り手と買い手のやりとり、そして、フリマアプリを運営する事務局からお客さまに発信されるお知らせはすべて文字によるコミュニケーションです。
このように、フリマアプリ上のコミュニケーションの大部分は文字によるものですが、コミュニケーションモードが文字に限られると問題もでてきます。例えば、対面であれば、相手の表情や話すときのイントネーション、間の取り方から相手の情報が得られますが、文字によるコミュニケーションではそれがかないません。そのため、情報がうまく伝わらず、それがコミュニケーション上の摩擦を生むといわれています。
このプロジェクトでは、フリマアプリ上で行われるコミュニケーションの摩擦をできるだけ少なくすることで、フリマアプリを快適な空間にすることを目指しています。
本プロジェクトが現在取り組んでいるのは、さまざまな場面の中でも、特にお客さまの購買体験に大きい影響を与えると考えられる、取引で問題があったときに事務局からお客さまに発信される「案内文」をよりよくするための研究です。
よりよい案内文とは、問題解決のためにお客さまがとるべき手順の「わかりやすさ」と「感じよさ」が両立しているものであると考えられます。言い換えると、テキストがもつ「情報伝達」機能と「感情伝達」機能のバランスの最適化を追及しています。そのような案内文を具体的にどのように書けばよいかを明らかにするために、本プロジェクトでは実際に、幅広い年代層や属性の方を対象に大規模なアンケート調査やインタビュー調査を実施しています。また、意味が伝わりにくい表現とはどのようなものかも調査しています。これらの知見を活用して、「わかりやすく」「感じのよい」案内文を作成することを目指しています。
本プロジェクトは、日本語を母語としない方にもわかりやすい「やさしい日本語」に改善していくプロジェクトとも連携しています。また、これまでも「留学生におけるフリマアプリの使用状況」の調査を行い、留学生のフリマアプリ使用上の問題点を明らかにしてきました。その知見はメルカリ内で共有され、サービス改善のために活用されています。
中北 美千子, 藤原 未雪, 2023, 「簡潔でわかりやすい」書き方が好まれないとき ―フリマアプリの「事務局からのお知らせ」を読む大学生が重視するもの―: 名古屋外国語大学, p. 97–117.
Publication year: 2023
中北美千子・藤原未雪(2022)「「カスタマーサポート」のジレンマ:顧客へのテキストメッセージに見られる「わかりやすさ」と「丁寧さ」のトレードオフ」『名古屋外国語大学論集 第11号』
Publication year: 2022