R4Dでは、共同研究パートナーと共にあらゆる能力のユーザが使用できる、C2Cマーケットプレイスの実現を目標に、インクルーシブデザイン[^1]の研究開発をしています。メルカリというC2Cマーケットプレイスは、日々多様なお客さまに利用いただいています。近年60代以上の利用者が増加していること[^2]や、視覚障がいを持つユーザーも物品の売買に関心を持っているという背景[^3]もあります。本プロジェクトでは、高齢者や視覚障がいを持つ方々を含むユーザーが直面する課題の特定を行い、テクノロジーの活用により、よりアクセシブルかつインクルーシブなEコマース製品の実現を目指しています。従来の視覚を用いて行う操作を、音声・触覚・ジェスチャー等の操作に置き換える、マルチモーダル・インターフェースのEコマースにおける可能性を研究しています。
[^1]高齢者や障がい者など多様なニーズを、製品のデザイン段階から巻き込むことで、多くの人々にとってアクセスでき、使用できる製品を設計するための手法
[^2]メルカリ、「60 代以上のフリマアプリ利用実態」に関する意識調査を実施
[^3]メルカリとピクシーダストテクノロジーズ、インクルーシブデザインの共同研究に着手〜視覚障がい者の E コマースサービス利用時のアクセシビリティ実態調査を実施〜
研究開始当初より、主に2つの目標を掲げてきました。それぞれ異なる障がいを持つ利用者が、メルカリのようなC2Cマーケットプレイスアプリを使うときに直面する課題とニーズを理解することと、その調査結果を用いて特定した課題を解決する新しい形のインターフェイスのプロトタイピングと検証を行うことです。 視覚障がいを持つ方々のショッピングに関する実態調査を行ったところ [^3] 、回答者の70%以上がオンラインショッピングを利用すると回答した一方、手続きや操作が困難なため、実際にオンラインで物品を販売・購入している人は少ないことが分かりました。本件についてさらに調査を進めるために、弱視者へのインタビューを複数回実施し、C2Cアプリ上の基本的な操作(閲覧、購入、出品)を一通り実施してもらいました ASSETS。調査の結果、C2Cプラットフォーム上でユーザーが生成するコンテンツ(写真や商品説明)だけでなく、写真撮影、サイズや商品状態の確認、発送などのオフラインのアクションについても改善の機会があることが分かりました。
また、下記のプロジェクトを通して販売・出品のプロセスを簡素化する方法についても模索しました。1) 高齢者のユーザーに対して、出品の手順を案内する対話型エージェント(投稿論文査読中) 2) DR(Diminished Reality:隠消現実感)アプリを使い、ユーザーは散らかった部屋の写真を撮影し、オンライン上でモノを売ったり、譲ったりすることで部屋が片付く様子を視覚的に表示 DeclutterAR。まだ中間結果ではありますが、対話式で手順を説明したり、情報を可視化したりすることで、物品の販売・出品のハードルが下がる可能性があることを示しています。
販売・出品のプロセスやオフラインでのアクションについては、現在、異なるニーズを持つ利用者にとってより発送しやすいさまざまな方法を検討しています。インタラクティビティ分野の主要なカンファレンスのパネルディスカッションやワークショップなどを通してAR/VRコミュニティと協働することで、アシスティブ・テクノロジーやインタラクティブ・テクノロジーの最新動向を把握し、色々なアイディアについて積極的に探求しています。よりインクルーシブな出品・発送プロセスを実現するためのアイディアをお持ちでしたら、ぜひご連絡ください。
Bektur Ryskeldiev, Asiya Gizatulina, Jueyon Hong
ACM SIGGRAPH Asia 2022
Publication year: 2022
B. Ryskeldiev, M. Kobayashi, K. Teramoto, K. Kusano
ACM CHI 23 Asian CHI Symposium
Publication year: 2022
Bektur Ryskeldiev
Schloss Dagstuhl
Publication year: 2022
Bektur Ryskeldiev
IMWUT 2022
Publication year: 2023
Joelle Zimmermann, Bektur Ryskeldiev, Mark Billinghurst, Kai Kunze, Jie Li, Julie Williamson
ISMAR 2022 Workshops
Publication year: 2022
Bektur Ryskeldiev
Invited Talk Leonardo ISAST LASER Talks, Stanford University
Publication year: 2022
Bektur Ryskeldiev, Kotaro Hara, Mariko Kobayashi, Koki Kusano
ACM ASSETS 2022 Posters
Publication year: 2022