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大阪大学ELSIセンターとR4Dの量子・ELSI合同チームが、IEEE Quantum Weekにて量子技術の未来を考えるカードゲーム「Quantum Quest」をテーマに発表を行いました。

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9/15~20にカナダのモントリオールで開催されたIEEE Quantum Weekにて、mercari R4Dと大阪大学社会技術共創研究センター(ELSIセンター)の研究者が共同開発するシリアスゲーム「Quantum Quest」のプロトタイプを用いたBirds-of-a-Feather session*(BoF)“Quantum Quest”: Dialogue and Exploration of Quantum Governance Through a Card Gameを実施しました。

*Birds-of-a-Feather session:特定のトピックに対して関心のある人が集まり、自由に議論するセッション。


「量子技術のELSI」に関する共同研究

mercari R4Dと大阪大学ELSIセンターは、2023年4月から「Co-innovationで切り拓く、最先端の研究・ビジネス領域の社会実装を加速させるELSI実践研究 〜ELSI対応なくしてイノベーションなし〜」と題した共同研究を推進しています。

「量子技術のELSI」は、その一環としてmercari R4Dのシニアリサーチャー・永山、リサーチエンジニア・寺元とELSIセンターの研究者が共に推進しているプロジェクトです。技術開発と並行して、倫理的・法的・社会的課題(ELSI)についても萌芽的な段階から検討し、将来的に量子技術の公正な社会実装に至ることを目指し、これまでに以下のELSI NOTEにまとめられたような様々な研究実践を展開してきました。


カードゲーム「Quantum Quest」について

現在私たちは、量子技術の開発競争をシミュレートするカードゲーム「Quantum Quest(QQ)」の開発に取り組んでいます。QQは、ゲームの参加者が量子技術開発の社会的側面について関心を持ち、量子技術により将来的にもたらされるであろう社会へのさまざまな影響や責任について視野を広げる一助となることを主な目的としています。

プレイヤーは現実の国家を模した4つのロールに別れ、量子アセットと呼ばれるカードを他のプレイヤーより多く獲得することで量子技術の覇権を握ることを目指します。ゲーム中には、「量子の冬」や「量子技術による既存の暗号解読の達成」など、量子技術開発の過程で起こるかもしれないさまざまなイベントを擬似体験する機会があり、プレイヤーはこれらに対処しながら量子技術を開発することが求められます。また、それぞれのプレイヤーは交渉をつうじて他のプレイヤーとの協力が可能な設計となっています。

※QQの紹介ウェブサイトはこちら https://sites.google.com/view/quantum-quest-card/

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IEEE Quantum Week BoF Sessionでの様子

今回実施したBoFセッション(90分)では、はじめに簡単にゲームの概要について説明した後、参加者にQQのプロトタイプを体験してもらい(ゲーム・セッション)、その後参加者の間で40分間のグループ討論(ディスカッション・セッション)を行いました。

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ゲーム・セッションでは、参加者がゲームマスターの進行のもと実際にQuantum Questをプレイしました。参加者は初めて体験するゲームであったにもかかわらず、積極的に他のプレイヤーと交渉したり、ゲームのラウンドごとに生じるイベントに対応したりしながらプレイを進めました。用意した3つのゲーム・テーブルはいずれも満席となり、それぞれのテーブルで白熱した戦いが繰り広げられました。 

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ゲーム体験後は、量子ELSIチームがQuantum Questの設計上の意図の一部について簡単に紹介する時間を設け、さらにそれぞれのテーブルごとに30分間のグループディスカッションを実施しました。ディスカッションでは、最初にゲーム体験を振り返り、次に「ゲームに表現された量子の世界と現実の世界はどのように異なるか?」と「理想的な量子技術の未来とはどのようなものか?」という2つのテーマについて話しあいました。

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ディスカッションでは活発な議論が繰り広げられ、参加者から「国家による開発だけではなく、ビッグ・テックに焦点を当てることも考えられるのではないか」「理想的な量子技術の開発のあり方や、何が勝利条件なのかということはロールによって異なっているのではないか。それは現実社会でも同様なのではないか」など、ゲームに対するフィードバックだけではなく、量子の未来についてのたくさんのフィードバックをいただきました。今回の発表で得た知見をもとに、今後もゲームの完成・公開に向けて開発を続けます。

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IEEE Quantum Weekの開催概要

IEEE Quantum Weekは、量子情報工学分野におけるトップカンファレンスです。量子情報技術の発展が純粋なサイエンスからエンジニアリングに移行しつつある状況を受けて、エンジニアリングを扱うIEEEが2020年から開催しています。今年は5回目の開催となり、本年度は研究発表・ポスター展示・パネルセッション・Birds-of-a-Feather sessionsなど様々なプログラムから構成されます。


学会発表情報

  • 発表タイトル
  • 登壇者
    • Sho Morishita(山梨県立大学/大阪大学), Yusuke Nagato(大阪大学), Konomi Higo(大阪大学/メルカリ), Kentaro Teramoto(メルカリ) and Shota Nagayama(メルカリ/慶應義塾大学)
  • 日時
    • 2024年9月18日 (水) 10:00-11:30 *現地時間
  • 場所
    • Palais des Congrès(カナダ モントリオール)
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