mercari R4Dリサーチャー 久保・野村アセットマネジメント・メルコインによる共同研究論文「確率制御を用いた暗号資産販売所における最適流動化戦略」が国際学術誌「Finance Research Letters」に掲載されました。
- 人工知能学会金融情報学研究会の論文:確率制御を用いた暗号資産販売所における最適流動化戦略
- 「Finance Research Letters」に採択された論文:Optimal liquidation strategy for cryptocurrency marketplaces using stochastic control
研究概要
暗号資産販売所は、ビッド・アスク価格を提示し、顧客から暗号資産の注文を受け付ける相対取引サービスであり、暗号資産市場に流動性を供給している。顧客からの注文によって販売所の暗号資産の在庫は変化し、一方で、在庫は常に価格変動リスクに晒される。このため、適切な在庫管理が必要になる。同じ相対取引サービスであるFX ディーラーの在庫管理問題については、確率制御に基づいた最適流動化戦略が提案されている。ただし、暗号資産市場は FX 市場と比べ、流動性が低く、ボラティリティ(価格変動の度合い)が大きい。更に、暗号資産販売所においては顧客からの注文に大きな偏りがみられる。そのため、暗号資産販売所における在庫管理問題を解決するためには、暗号資産市場に特有の性質を考慮して、最適流動化戦略を構築する必要がある。 そこで、本研究では暗号資産販売所に対する在庫管理問題を定義し、確率制御に基づき最適流動化戦略を提案する。モデルパラメータを暗号通貨販売所の公開データを用いて推定し、数値計算により、最適流動化戦略を得た。得られた結果から、注文頻度の偏りが最適流動化戦略に影響を与えることを示した。また、単純な流動化戦略と比較することで、提案手法の有効性も確認した。
今後の展望
本研究により得られた最適流動化戦略は、暗号資産販売所における在庫管理問題を解決する一つの方法である。今後、より精緻なマーケットインパクトのデータや、より高度な確率モデルを導入することで、さらなる収益の安定化を実現できる可能性がある。本研究の成果は暗号資産販売所、ひいては暗号資産市場全体の安定化につながっていくものである。